舞台とお酒が好きな人の備忘録

舞台とお酒が好きな人の備忘録です。

4/21、4/24観劇『High Life』

4月に入って5~6作目の観劇です。

『High Life』

作:リー・マクドゥーガル 翻訳:吉原豊司 演出:谷賢一 出演:古河耕史/細田善彦/伊藤祐輝/ROLLY
会場:あうるすぽっと

折り込みチラシに惹かれて観に行ったいわゆるジャケ買い的な作品。チラシはどこで手に入れたんだけっけな?確か『砂岡事務所プロデュース 東海道四谷怪談』だった気がする。チラシのビジュアルがすんごく好みだったんですよ。あとROLLYさん好きだし。煽り文句も、カナダ戯曲!*1出てくるのは全員ジャンキー!…これ観たい!!ってなって。HPに載ってる、発表当初やばすぎでカナダでどこの劇場でも上演拒否されて、2年かかってようやくマイナーな小劇場で上演することができたっていうこぼれ話を読んでからさらに観たさ倍増!!

で、観に行きましたら。すんごく、よかった。とても、よかった。まだ今年半分しか経ってないけど、ベストオブジイヤーかも。よすぎて、当日券で2回目観に行きましたし。

まず、舞台セットがめちゃくちゃ好み。劇場に足を踏み入れた瞬間、真っ赤に染められた(映像ですが)スクリーンを背景に、積み上がるガラクタの数々。ヘドウィグ・アンド・ザ・アングリーインチのセットを連想させます。開演直前になるとOpen Reel Ensembleの2人が舞台両端にセットされた巨大なオープンリールテープレコーダーの元につき、劇中生演奏を繰り広げる演出も素敵。Open Reel Ensembleの2人の黒スーツが黒子を連想させます。

ちなみにこのガラクタの山が舞台最後で盗難車になります。その演出もものすごい好き。

最近の記事で“話が薄い”と毒舌連発している私ですが、本作だって話の内容は大したことない笑。4人のジャンキーが集まって、薬買う金欲しさに銀行強盗企てて、でも強盗に向う途中で車ん中で仲間割れして、一人死んじゃって、でも懲りずにまた犯罪計画して。。。っていうしょーもない話です。でもそのしょーもない話を展開する、演技、衣装、音楽、映像*2全てがマッチしていて、魅力的な世界観を作り上げてるんですよね。舞台ってそういうものじゃない?

登場人物は全員とにかくヤク中。舞台となっている古河耕史演じるディックのアジトにやってきては、ヤクをうってトリップします。そのトリップした彼らが見る幻影をOpen Reel Ensembleが奏でる音楽とともに、背後の巨大なスクリーンに映し出される映像で表現しています。映像作家は清水貴栄さん。彼の映像もキッチュでおしゃれで、ヤバさも表現されていてすごく良かった。

社会的には絶対に賞賛されることはないヤク中4人組の日常が、原色に彩られた毒々しい食虫植物だけの植物園を観てる様な感じで描かれている様な。最近流行りの猛毒展とかも感覚的には近いかもしれないです。行ったことないけど。

終演後は、人が一人亡くなってるし、また犯罪しようとしているし全然救われてないんだけど、なぜか青春映画を観終わった後の様な清々しい気分になります。多分、この作品に出てくる人達は全員“純粋”で“真っすぐ”なんだと思う。行動原理に矛盾がないというか。それが清々しさを生む要因なのかもしれない。

例えば、計画の発案者であるディックは銀行強盗の元手に必要な600ドルを、さらに大金手に入れるために一度銀行員に渡せと指示する。でもそれは勿体無い!って本気でモメるシーンもほんとバカバカしくて好き。

純粋さの典型が伊藤祐輝演じるバグ。怒りっぽくて、気に入らないことがあるとすぐ暴力で解決しようとするどうしようもない人。プライベートでこんな人いたら絶対ヤダわって人笑。彼がお気に入りの"Born to Run"という曲が入ったテープが誰かに盗まれた!って騒ぐシーンがあるんだけど、この曲のタイトルこそ彼の生き様を表してるんだと思う。
Bruce Springsteen - Born to Run - YouTube

出てくる人物4人とも魅力的だったけどROLLYさん演じる死に損ないのドニーがやっぱり一番だったかな〜。まさしく“怪演”て感じ。ディックにはいい様に利用され、バグに脅され、細田善彦演じる両刀使いのビリーには色仕掛けまでされ…みんなのおもちゃ的な存在だけど一番演者の中で年上なんだよね笑。半裸も惜しげも無く見せてくれましたし笑。好きな映画『サウンドオブミュージック』は声だして笑った笑。

唯一、ビリーが銀行員のお姉さん相手という設定で演じる一人芝居のシーンだけが、ちょっと間延びしていて意味がよくわかんなかったな…あれはこの時に裏で、ドニーがバグ達にビリーのことをチクってたっていう伏線の為のシーンなのかな?

こんな大絶賛の舞台なのに全然お客さんが入ってなかったのが心残り…宣伝もっと頑張りましょう。あと、パンフレット作ってないのは残念すぎる!SMAステージ第一弾というところで、苦労も多かったことでしょうが、ぜひ第二弾を渇望します!


*1:海外戯曲好きです

*2:つまりは演出なんですが